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Clinical Cases 症例報告

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※手術の写真を掲載しておりますので、
苦手な方はご注意ください。

小型犬の両側膝蓋骨外方脱臼(LPL)に対し 大腿骨前捻角矯正で治療が奏功した1例

膝蓋骨外方脱臼(LPL)は小型犬では少なく、全体の10%以下と言われています。また、犬のLPLの治療は特に大型犬では成功率は非常に低いという報告があります。一方で、小型犬でのLPLの治療に滑車溝形成術、脛骨粗面転移術、軟部組織の手術を行なったところ、治癒率は高かったという報告もあります。現在のところ、小型犬膝蓋骨外方脱臼に対する報告は少なく、その治療方法は個々の獣医師の裁量に委ねられているところがあります。今回、小型犬の両側膝蓋骨外方脱臼(LPL)に対して、大腿骨前捻角矯正を行なったところ、治療が奏功した1例を紹介します。
症例はスピッツ、避妊雌、5歳1ヶ月齢、6.8kgです。既往歴は保護犬のため不明です。両後肢ともに曲がってしまっており、歩き方がおかしく、段差を降りることができないという主訴で来院されました。

▲静止画のためわかりにくいですが、膝を伸ばすことができないため、足首で前方に進んでいるような状態です。

▲X線画像検査です。

▲膝蓋骨(黄色丸)が外側に脱臼しているのが確認されました。グレードは4/4で、手で戻すことが困難な状態でした。

▲CT画像検査です。骨の各種パラメーターを測定しています。異常が出ているのが大腿骨のFTAと呼ばれる数値でした。FTAは大腿骨前捻角と呼ばれるもので、大腿骨に対する大腿骨頭の向き(捻れ)を示していて、内方脱臼(MPL)では低くなり、外方脱臼(LPL)では高くなる傾向にあると言われています。

▲そこで、3Dプリンタ骨モデルを作成し、手術計画を立てることとしました。

▲先ほどのFTAを低くする、つまり大腿骨滑車溝が、外にある膝蓋骨を迎えにいくような形で手術計画を立てました。大腿骨の骨幹中央で骨切りし、遠位を外旋して固定するような形です。

▲3Dプリンタ骨モデルを実際に切断して、回転させて固定した状態です。これを手術で再現していきます。

▲実際の手術所見です。計画していたように骨を切断して、あらかじめ曲げておいたプレートで固定しています。

▲術後のレントゲン画像です。予定通り骨切りが実施され、プレートで固定されています。外にあった膝蓋骨は大腿骨にしっかりと固定されているのがわかります。

▲3ヶ月後には反対足も同様に実施しました。先に実施した方はプレートを抜去しています。

今回前捻角を矯正したことでLPLは正常な位置に固定され、順調な経過を経ることができました。
まだLPLに関しては情報が少なく、ベストな治療法が確立されていませんが、CT検査などにより本人の状態を正しく理解し異常を検出することが重要であると考えます。MPLと異なる病態であることを理解して治療にあたることも重要です。

執筆担当:獣医師 磯野
動物医療センター目黒中央トップページ
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